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毎日歩いていれば、脚の筋力は保てる? 歩くだけと筋トレの違い

歩くなどの有酸素運動は健康に役立ちますが、脚で踏ん張る力(脚の筋力)は、筋トレ(筋力トレーニング)を足したほうが伸びやすいことが研究と指針からわかります。

#高齢者#ウォーキング#筋トレ#筋力

記事タイプ
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研究デザイン
Khalafi ら 2022 はメタ解析(ランダム化比較試験49件・2,587人)。Peterson ら 2010 はメタ解析(47件・1,079人)。Yoshiko ら 2018 は、対照群を置かない非ランダム化の試験(歩くだけの群31人と、歩くことに自宅での筋トレを足した群33人)
対象者
Khalafi 2022 は50歳超で、平均年齢が55〜88歳のグループ。Peterson 2010 は50歳以上。Yoshiko 2018 は健康な高齢者(歩くだけの群は平均72歳、筋トレを足した群は平均73歳)。Khalafi 2022 の「有酸素運動のみ」の群の運動の中身(歩く運動に限るかどうか)や、研究ごとの対象者の健康状態は、要旨からは確認できていない
限界
Khalafi 2022 は、有酸素運動に筋トレを足した群と、有酸素運動だけの群を比べた研究で、「歩く運動だけ」に絞った比較ではない。Yoshiko 2018 は歩くだけの群の脚の筋力そのものは測っておらず、対照群もない。いずれも、毎日歩く人が実際にどれだけ脚の筋力を保てているかを追った研究ではない

毎日歩いているのに、階段がつらくなった、立ち上がるときに脚が頼りない、という人は少なくありません。「これだけ歩いているのだから脚は強いままのはず」と思っていると、気づきにくい話です。

この記事では、**歩くなどの有酸素運動(息が少しはずむ程度に長く続ける運動)**と、**筋トレ(筋力トレーニング)**を分けて書きます。有酸素運動は、長く動き続けられる力(持久力)を保つ運動です。筋トレは、ふだんより重い負担をかけて筋肉を鍛え、脚で踏ん張って体を支える力(脚の筋力)を伸ばす運動です。

結論から言うと、歩くことは健康に役立ちますが、脚の筋力は、歩くだけでは足りない場合があります。筋トレを足したほうが伸びやすい、というのが研究と公的な指針から言えることです。

よく言われていること

「歩くのがいちばん体にいい」「毎日1万歩歩けば脚も衰えない」と言われることがあります。

歩くことが健康に役立つのは本当です。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、高齢者に、歩くか、それと同じかそれ以上の強さの動きを1日40分以上(1日約6,000歩以上に相当)勧めています。[4]

ただ、歩くことで保てるのが持久力なのか、脚の筋力なのかは、別の話です。

研究で確かめる

イランのカシャーン大学などの研究チームは2022年、49件のランダム化比較試験(くじ引きでグループ分けした実験)の結果をまとめて分析しました。対象は中高年から高齢者で、平均年齢が55〜88歳のグループ、計2,587人です。[1] 有酸素運動だけの人と、有酸素運動に筋トレを組み合わせた人を比べています。この研究の有酸素運動は、歩くことに限りません。

その結果、有酸素運動に筋トレを組み合わせた人のほうが、有酸素運動だけの人より脚の筋力が上がっていました。一方、筋トレを組み合わせた人と、筋トレだけの人では、脚の筋力に差がありませんでした。[1] 筋トレを足すと脚の筋力が伸び、筋トレだけの人とは差がなかったので、脚の筋力を伸ばしていたのは筋トレの部分だと考えられます。

アメリカのミシガン大学の研究チームは2010年、50歳以上の人(47件・1,079人)が筋トレをしたときの結果をまとめています。[2] 筋トレで筋力は上がり、きつめの筋トレほど上がり方が大きい傾向でした。脚で重りを押し出す運動(レッグプレス)で押す力が、平均でおよそ3割強くなっています。

では、歩くだけの人はどうでしょうか。日本の名古屋大学の研究者が2018年に発表した試験が参考になります。[3] 平均72歳前後の健康な高齢者31人が、10週間、1回30分の歩行を週2〜3回行いました。その結果、太ももの筋肉に脂肪などが少なくなり、筋肉の状態がよくなり、椅子からの立ち座りや5メートルを速く歩くテストの成績も上がりました。歩くだけでも、変化はあったわけです。

同じ研究で、歩くことに自宅での筋トレを足した33人(平均73歳)は、太ももの筋肉の状態がさらに大きくよくなりました。[3] ただし、この研究は比べる相手のグループがなく、脚の筋力そのものは測っていません。

根拠がある部分と、無い部分

根拠がある部分

  • 歩くことは、高齢者の健康のために公的な指針が勧めている[4]
  • 脚の筋力を伸ばすには、有酸素運動に筋トレを足したほうが、有酸素運動だけより効果が大きい[1]
  • 50歳以上の人でも筋トレで筋力は上がる[2]
  • 厚生労働省は、国際的な指針づくりのための研究のまとめで、筋トレによって筋力・身体機能・骨密度が良くなると示されたと説明しています。高齢者は転びにくく、骨折しにくくなるとも示されています。そのうえで、高齢者に筋トレを週2〜3日勧めています[4]

根拠は出ていない部分

  • 「毎日歩けば、脚の筋力を保てる」という主張には、根拠が出ていません。

なぜ歩くだけでは足りないのか

筋肉は、ふだんの生活でかかる以上の負荷をかけたときに強くなります。厚生労働省のガイドも、この考え方(ふだんより少し重い負荷を、少しずつ高める)を筋トレの基本としています。[4] 平らな道をふつうの速さで歩くとき、脚にかかるのは自分の体重を支える程度の重さです。毎日歩いていて、その負荷に慣れているなら、それ以上の刺激にならず、筋力が伸びにくいのは自然だと考えられます。研究が示した「筋トレを足したほうが伸びやすい」という結果とも合います。

いま言えること

歩くことをやめる必要はありません。歩くことには持久力を保つ役割があり、WHO(世界保健機関)の指針も、有酸素運動と筋トレの両方を定期的に行うことを勧めています。[5]

厚生労働省も、これまで強調されてきた歩くことに加えて、筋力・バランス・柔軟性など複数の力を高める運動(多要素の運動)を週3日以上行うよう勧めています。[4] 体が硬いと感じる人向けの柔軟性の運動も、この多要素の運動に含まれています。

何から始めるかは、体の状態で変わります。

  • 脚が弱くなってきた、立ち上がるのがつらい人:歩くことは続けたまま、筋トレを週2〜3日足すのがよいでしょう。椅子からゆっくり立ち上がって座る動きや、椅子の背に手を添えたかかと上げなど、自分の体重を使う運動から始められます。厚生労働省は、腕立て伏せやスクワットのような自分の体重を使う運動も、筋トレに含まれるとしています。[4]膝に痛みがある人は、椅子の立ち座りから始めてください
  • 時間がない、運動が苦手な人:厚生労働省は、指針の量に届かなくても、少しでも体を動かすことを勧めています。[4] 歩くことを続けたうえで、1回数分の筋トレを週2〜3日足すところから始めれば十分です
  • すでに歩く習慣がある人:歩く時間を増やすより、筋トレを足すほうが、脚の筋力は伸びやすいと考えられます
  • 足腰に痛みがある、持病がある、転びやすい人:自己判断で筋トレを始めず、まず医師に相談してください。厚生労働省も、身体機能が低下している高齢者には、安全に配慮し、転倒に注意するよう求めています。[4]

椅子の立ち座りやかかと上げは、無理のない範囲で行ってください。ふらつくときは、壁や机につかまって行ってください。

無理のない範囲で行ってください。 痛みやめまい、息苦しさがあるときは、すぐに中止してください。立って行う動きは、壁や椅子の背につかまれる場所で行い、ふらつきや転倒に気をつけてください。血圧や心臓に不安がある人、持病がある人は、始める前に医師に相談してください。

Summary

  1. 01歩くなどの有酸素運動は、息が上がる程度の運動として健康に役立つ。やめる必要はない。
  2. 02脚で踏ん張る力(脚の筋力)は、有酸素運動だけの人より、筋トレ(筋力トレーニング)を足した人のほうが伸びやすい。
  3. 03厚生労働省は、高齢者に筋トレを週2〜3日、筋力・バランス・柔軟性など多要素の運動を週3日以上勧めている。
  4. 04筋トレは自分の体重を使う運動(椅子からの立ち座りなど)でもよい。無理のない範囲で、痛みがあれば中止する。

References出典・参考

  1. [1]Khalafi M, Sakhaei MH, Rosenkranz SK, Symonds ME. Impact of concurrent training versus aerobic or resistance training on cardiorespiratory fitness and muscular strength in middle-aged to older adults: A systematic review and meta-analysis. Physiol Behav. 2022;254:113888.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  2. [2]Peterson MD, Rhea MR, Sen A, Gordon PM. Resistance exercise for muscular strength in older adults: a meta-analysis. Ageing Res Rev. 2010;9(3):226-237.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  3. [3]Yoshiko A, Tomita A, Ando R, et al. Effects of 10-week walking and walking with home-based resistance training on muscle quality, muscle size, and physical functional tests in healthy older individuals. Eur Rev Aging Phys Act. 2018;15:13.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  4. [4]厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(令和6年1月)mhlw.go.jp
  5. [5]Bull FC, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020;54(24):1451-1462.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。