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ストレッチをすれば筋肉痛は早く治る? 研究で確かめると

運動の前や後のストレッチで、筋肉痛(遅れて出る筋肉の痛み)が軽くなる効果はごくわずかという研究結果を紹介します。ほかの回復方法との比べ方と、年代別の選び方も解説します。

#筋肉痛#ストレッチ#回復#高齢者

記事タイプ
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研究デザイン
メタ解析・系統的レビュー(複数の実験の結果をまとめて分析した研究)3本。主に紹介するのは Herbert ら 2011(コクランレビュー。12件の実験。うち1件は2377人の大規模な実験で、ほかは1件あたりストレッチをした人が10〜30人)。補足は Afonso ら 2021(10件・229人)と Dupuy ら 2018(99件の実験)
対象者
Herbert 2011 は健康な成人。Afonso 2021 は17〜38歳で大半が男性。Dupuy 2018 の対象者の年齢・性別の内訳は、要旨からは確認できていない。高齢者を対象にした結果は、3本とも要旨からは確認できていない
限界
Herbert 2011 は、含まれた実験すべてで偏りの危険が中程度か高く、証拠の質は低〜中程度とされている。Afonso 2021 も、約7割の実験で偏りの危険が高く、データが少ないため、ストレッチを回復のために勧めるかどうかの判断は避けるべきとしている。Dupuy 2018 は、ストレッチ単独の結果の数字を要旨に示していない(効果が見られた方法の中にストレッチは挙げられていない)。いずれも健康な人が運動した後の筋肉痛を調べており、けがや病気による痛みは対象外

運動した翌日や翌々日に筋肉が痛くなると、「ストレッチをすれば早く治るかな」と思う人は多いはずです。

この記事で「筋肉痛」と呼ぶのは、運動のあとしばらくして出てくる筋肉の痛み(遅発性筋肉痛)のことです。転んでひねった、急に痛めたといったけがの痛みは含みません。

ここでは、研究が測った「痛みの強さ(運動の翌日から数日後まで)」で確かめます。どの日で比べても差はごくわずかでした。

結論から言うと、ストレッチで筋肉痛が軽くなる効果は、研究を見る限りごくわずかです。「早く治る」とまでは言えません。ただし、ほかに痛みを減らす効果が見られた方法はあります。

よく言われていること

運動の前後にストレッチをする習慣は、スポーツの現場でも、ふだんの運動でも広く続いています。「筋肉をほぐすと痛みが残らない」「運動の後に伸ばしておくと翌日が楽」という話は、よく聞きます。

やると楽になった気がするので、効いていると感じやすいのかもしれません。

筋肉痛の原因は、運動でたまった乳酸だ、という話もよく聞きます。これは誤解です。1983年に発表された実験では、平らな道を走ったときは血液中の乳酸が増えたのに、筋肉痛はほとんど出ませんでした。反対に、下り坂を走ったときは乳酸が増えなかったのに、筋肉痛が出ました。[4]

いまは、慣れない運動や、下り坂・重りをゆっくり下ろすような、ブレーキをかける動きで筋肉に細かな傷ができ、それが回復する過程で痛みが出る、という考えが中心です。[5]

研究で確かめる

いちばん大きな根拠は、コクラン(医療の研究を世界中から集めて評価する国際組織)が出している、研究結果を集めてまとめた報告(レビュー)です。オーストラリアの研究機関のチームが2011年にまとめたもので、12件の実験を調べています。健康な成人が対象で、ストレッチを運動の前、後、または前後にした場合を、しなかった場合と比べています。[1]

結論は、運動の前でも後でも、前後の両方でも、筋肉痛が意味のある大きさで軽くなることはないというものでした。1つだけ2377人が参加した大規模な実験があり、そこでは痛みがいちばん強い日の強さが、ほんの少し下がっていました。ただ、その差は「ごく小さい」と研究者自身が書いています。[1]

運動の「後」に絞った研究もあります。ポルトガルのポルト大学などの研究者が2021年に発表した分析は、運動後のストレッチと、何もせず休むことを比べた10件の実験(229人。17〜38歳で、大半が男性)をまとめています。筋肉痛の強さは、運動の1日後・2日後・3日後のどの時点でも、ストレッチをした人と休んだ人で差が見られませんでした。[2]

つまり、「運動の前にやる」でも「後にやる」でも、筋肉痛を軽くするためにストレッチをする意味は、研究では確かめられていません。

根拠がある部分と、無い部分

根拠がある部分(研究)

  • 健康な成人が運動したあとの筋肉痛について、ストレッチの効果はごくわずか。[1]
  • 運動後のストレッチは、何もしないで休むのと比べて、筋肉痛の差が見られない。[2]

根拠は出ていない部分

  • 「ストレッチをすると筋肉痛が軽くなる、早く治る」という話は、研究では確かめられていません。
  • 高齢者だけを調べた結果は、ここで紹介した3つの研究には、高齢者だけを調べた結果はありませんでした。60〜70代の人にも同じとは言い切れず、まだ分かっていません。

ストレッチの効果は小さいが、ほかの方法はどうか

フランスのポワティエ大学の研究者が2018年に発表した分析が、役に立ちます。運動後の回復方法を比べた99件の実験をまとめたものです。[3]

  • 効果の大きさは方法で違いますが、痛みを減らす効果が見られたのは、軽い運動で回復する(アクティブリカバリー)、マッサージ、体を締めつける着圧の衣類、水に浸かる方法、冷やす方法(冷水・氷など)などでした。冷たい水に浸かる方法は体への負担が大きいので、持病のある人や60〜70代の人は、無理に試さないでください。
  • この中で、マッサージがいちばん有力でした。
  • 効果が見られた方法の中に、ストレッチは入っていませんでした。

ただし、これは運動をした人たちの研究で、ふだんの生活でどの方法が自分に合うかまでは教えてくれません。

いま言えること

「ストレッチをやめるべきか」と言いたいわけではありません。気持ちよく体を動かしたい、体が硬くて気になる、といった理由でストレッチをするのは、それで十分意味のあることです。筋肉痛を早く治すことだけを目的にしなくてよい、ということです。

  • 運動の翌日、筋肉痛が強い人:ストレッチで頑張るより、ゆっくり自転車をこぐなどの軽い運動のほうが、研究で痛みを減らす効果が見られた方法です。[3] 軽く歩くのもよいでしょう。強い痛みをこらえて筋肉を伸ばし続ける必要はありません。
  • ストレッチが好きな人、習慣にしている人:続けて問題ありません。痛い手前で止めて、息を止めずにゆっくり行いましょう。
  • 60〜70代の人:無理に深く伸ばすと、関節や筋肉を傷めるおそれがあります。気持ちよく感じる範囲で、手すりや椅子につかまって行うと安全です。痛みを減らしたいときは、軽く歩くほうが無理がありません。
  • マッサージを試したい人:研究ではいちばん効果が見られた方法です。[3] 強く押しすぎず、心地よい強さで行います。

どの場合も、無理のない範囲で行ってください。 次のようなときは、筋肉痛ではなく、けがや別の病気かもしれません。ストレッチやマッサージを続けず、医師に相談してください。

  • 痛みが強く、動かせない
  • 腫れや熱がある、色が変わっている
  • 数日たっても痛みが引かない、むしろ悪化する

Summary

  1. 01運動の前や後のストレッチで、筋肉痛(遅れて出る筋肉の痛み)が軽くなる効果は、ごくわずか。
  2. 02運動のあとのストレッチは、何もせず休むのと比べても、痛みの強さに差は見られなかった。
  3. 03筋肉痛の原因は乳酸、というのは誤解。慣れない運動でできた筋肉の細かな傷が、回復する過程で痛む、という考えが中心。
  4. 04痛みを減らす効果が見られた方法の中では、マッサージがいちばん有力だった。軽い運動や水に浸かる方法にも効果が見られた。
  5. 05ストレッチは、無理のない範囲で気持ちよく体を動かす習慣としてはかまわない。ただし筋肉痛を軽くするためだけに頑張る必要はない。
  6. 06痛みが強い、腫れている、数日たっても悪化するときは、筋肉痛ではなくけがかもしれないので、医師に相談する。

References出典・参考

  1. [1]Herbert RD, de Noronha M, Kamper SJ. Stretching to prevent or reduce muscle soreness after exercise. Cochrane Database Syst Rev. 2011;(7):CD004577.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  2. [2]Afonso J, Clemente FM, Nakamura FY, et al. The Effectiveness of Post-exercise Stretching in Short-Term and Delayed Recovery of Strength, Range of Motion and Delayed Onset Muscle Soreness: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Front Physiol. 2021;12:677581.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  3. [3]Dupuy O, Douzi W, Theurot D, Bosquet L, Dugué B. An Evidence-Based Approach for Choosing Post-exercise Recovery Techniques to Reduce Markers of Muscle Damage, Soreness, Fatigue, and Inflammation: A Systematic Review With Meta-Analysis. Front Physiol. 2018;9:403.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  4. [4]Schwane JA, Watrous BG, Johnson SR, Armstrong RB. Is lactic acid related to delayed-onset muscle soreness? Phys Sportsmed. 1983;11(3):124-131.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  5. [5]Hotfiel T, Freiwald J, Hoppe MW, et al. Advances in Delayed-Onset Muscle Soreness (DOMS): Part I: Pathogenesis and Diagnostics. Sportverletz Sportschaden. 2018;32(4):243-250.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。